「人事のひとって別にそんなすごい人じゃなくて、あくまで人が人を見てるということ。あまり気負わずに、どーんと構えてやってほしい。」

人材サービス系企業に就職。3年間勤めた後、大学院で学ぶ道を選択。
2011年9月11日

就活情報サイトの制作や就活イベントの開催などを手掛ける企業で活躍。
文系。女性。韓国籍。朝鮮学校出身。在日3世(細かく言えばお父さんが2世、お母さんは3世)。
アメリカの大学に2年半留学し、向こうの大学でジャーナリズムの学部を卒業。就活も、アメリカでスタート。留学生枠の就活でも内定をもらったが、普通の就活で今の会社に出会う。

2008年から勤務。就活に関して企業の人事の人と一緒に仕事をする立場ならではの、アドバイスも話してくれた。

かねてから、数年働いた後は大学院に戻りたいと考えていたので、大学院を受験、合格して退社。現在は大学院で文化人類学を専攻している。

【就職先】大手の人材サービス系企業。就活の情報媒体やイベントを制作する部署。
【活動期間】2006年秋にアメリカで日本企業が説明会を開催。それに合わせてエントリーを準備。その冬に一時帰国し、留学生向け枠の最終面接ラッシュ。内定をもらうも、結局は、2007年夏に帰国後、今の会社を普通の就活生と同じ枠で受験、2007年7月に内定をもらって就活終了。

就活生に読んでほしい注目ポイント☆

  • 目から鱗(?)中小企業人事のおじさんたちにとって就活生はどう見える?
  • 就活は、合う合わないが大事。人事の人だってそんなに人が見えるわけじゃない。リラックスして面接に臨んで!就活生へのメッセージ。
  • 在日のことを企業にどう話す?実例や必要な心構えのtips。
    「日本語が上手」と言われとき、普通の外国人と誤解され就労条件のことを懸念されたとき、面接官のおっちゃんに韓流ブーム話をひっぱられすぎたとき…そんな場面を想定して心構えしておいても、損はないはず!
  • 働いていたら、差別的なクライアントにニアミスすることも・・?
  • アメリカ留学時に就活を始めることになったら?実例ステップを参考に。

全体ステップ

子どもの頃の将来の夢

「世界ふしぎ発見」のミステリーハンター、…にはなれないことがだんだんわかってきたので、テレビ制作会社や新聞記者など、いろんな国にいって、いろんなものを見ることができる仕事をイメージ。

大学はメディアへの関心もあって社会学部を選ぶ

FM802の大好きなDJの母校である大学へ。文章を書くのも好きだったので、新聞記者やメディアに関わる仕事を考えて、社会学部に。「世の中の秘密を知ろう」的なキャッチフレーズにも惹かれて。 

※筆者のまわりだけかもしれませんが、在日の子は、「世界ふしぎ発見」のミステリーハンターになろうとけっこう長い間思っていた人が多いような気がします(笑)。

国際交流サークルで活動。大学2回生から、アメリカの大学に留学

2006年、メディアは若干諦めて、業界を大きく広げて就活を開始。

  • 2006年 秋、ボストンでキャリアフォーラムに参加。本格的に就活がスタート!
    このフォーラムにはすごい数の日本企業、在米の就活生たちが参加。
    フォーラム当日の中に、1次面接、2次面接が行われ…最終面接は冬に日本で、というコース。
  • 2006年 冬 日本に戻り、短期滞在中に、最終面接などを受けまくる。内定も2,3個獲得。
  • 2007年 前半 普通枠での就活も始める。
  • 2007年 夏 大学の方でも、すべての授業を採り終え、帰国。卒業に必須の3カ月のインターン課題をちょうど上手い具合に日本でできることに。東京でインターンを実行。
  • 2008年 春入社、4月から勤務開始。
  • 2010年 大学院進学の勉強を始める。試験に合格。
  • 2011年 3月退社予定(その後、大学院に進学)

当時の第一志望などはけっこうあっさり落ちてしまったが、後で思うと、その企業には行かなくて良かった。内定は全部で4つもらい、業界は全部ばらばら。今の会社は、面接で、絶対ここがいいなと思ったところ。この会社では、広告制作に携わることができる可能性があったことも、決め手になった。

今、就活に関わる仕事をしていて、言えること

今の仕事(インタビュー時現在):
就職情報サイトの企業広告の制作や就活イベントのサポート

就職先は、人材サービス。インターネットの就活情報サイトやその他のメディアを配信し、就活イベントの企画運営などを企業と一緒に行う。いわば、ビジネスサイドから就職活動を扱う仕事で、サービスを通じて就活生と企業を繋げている。

「リクナビ」、「日系就職ナビ」、「マイナビ」などの人材サービス系企業は、採用活動をしている企業のところに営業に行って、自社のサイトの枠や就活イベントを売り込んで、契約が成立したら、それらの内容を企業と一緒に制作する。お互いはライバル同士。

※就職活動に関するお話を聞くにはある意味ぴったりの人。インタビューに応えて、今の仕事ならではの、就活生へのアドバイスなども話してくれました。ちなみに、当然ながら、あくまでも個人的な経験談や思いを話してくれたものであって、「客観的な事実である」という性質の話ではありません。また、インタビューというものは本来、話の展開や会話のノリによって言葉選びや若干のニュアンスは変わるものです。そこらへんに配慮して読んでくださったら有難いです。

具体的な仕事は、就職情報に関する制作、企画運営

現在の部署の業務は、就活メディアをつくる仕事と就活イベントをつくる仕事の二本柱。

前者は、企業が新卒の学生を採用するための、企業ホームページやパンフ、就活サイトに掲載する画面などを制作。後者は、就活のイベントを企画したり、説明会のパワーポイントをつくったりなど、イベントを運営するための下準備をしたりする仕事。

主に中小企業の人事とやりとりをして、相手企業の希望に合うサービスを提供する作業もしてきたが、まだまだ(自称)「ペーペーの社員」は、就活イベント会場でひたすら段ボールを開けている日も。

こうした仕事なので、企業に自社の採用基準についてインタビューを行うこともあるし、人事の「おじさんたち」の就活生に対する期待や不満(愚痴?)を聞く機会も多い。

就活に関する多種多様な媒体を制作

Q:具体的な商品としては、何を扱っているの?

何でも売るんですけど。「ナビ」の枠を売るっていうのが一番メインなんですけど、それだけじゃなくて、たとえば「パンフレットつくりましょ」ってなったらパンフレット売りますし。「こういう企画をしましょう」っていう企画運営、学生向けのイベントの企画提案運営とかも、サービスですし。あとは雑誌もありまして、そこの枠を売ったりも。

ほかにも、(企業は)採用のために学生の個人情報とかをいっぱい扱うんですけど、そのシステムを売ったりとか。あと学生との対応みたいなこともアウトソーシングでやってますし。ほんまに何でも入れるところがあれば入るっていう。

今の仕事をしていて就活について思うこと

今から考えると、就活していた当時は、就活のことをよく知らなかったなと思う部分も。面接では、自分が在日であることなど、難しいことを言い過ぎていたと思う。今、仕事で人事のおじさんたちと話していると、元気な人を求めている。企業側のリアリティを知って、今就活するとしたら、「明るくて元気です!」とアピールするし、どんなに小さいことでも自分が動いて人を巻き込んで行動したことを話す。

Q:今から就活を振り返って思うこと、あるいは働いてみたからこそわかることってある?

うーん、いま私が学生やったら、あんまりそういう(在日としての)自分のバックグラウンドのこととかを小難しく言わへんやろうなぁと思いました。自分がどういうスキルをもっているのかっていうのを純粋にアピールして、あとは、けっこう企業ってフィーリングで採る面があるんで、明るくて元気です!、みたいなアピールしたら、採ってもらえたんやろうなってすごい思います。

(就活していたときは)なんか難しく考えすぎてたなって。相手は人なんで(笑)、そんな難しいこと言っても、まぁ。

Q:なるほど、やっぱり大学っていう学問の世界との落差ってあるんやろな。でも、アピールできるスキルっていっても、自分は「スキルがない」っていう場合はどうしたらいいのかな?

そうなんですよ、今思うのは、(狭い意味の「スキル」ではなくて)自分でこういうことを考えて、具体的にこういうふうに人を巻き込んで、こういう結果が出ました、みたいな、そういう、自分が具体的に動ける人間だ、能動的に動ける人間だっていうのを企業は評価するんやなっていうのがわかったんで、そこをもっとアピールすれば良かったなって。なんか、自分がどこに所属しててとか、そういうのって結局、ただ所属してるだけで、自分に今あるものは全然見えてこないんで、そういう(自分がどう動いたという)ところをもっとアピールすれば良かったなって、すごい思いましたね。

企業サイドから見て、学生に言って欲しいこと

実際に企業の人が、「文化祭の実行委員やってました」ってすごいよく言われるらしいんですけど、いやっ、そこに所属してただけでは全然すごいことわかんないし、(採用する側としては)何やったか知りたいんやけどなあー、ってすごい感じるみたいで。小さいことでもいいから、主体的に動いた経験っていうのはすごい言う価値あると思うんです。

Q:あ、そっか、今の仕事って、企業側がどういう人を採りたいと思ってるとか、企業側のニーズが見える位置やねんな。

そうですね。最近の学生がまじめ過ぎるってみんなめっちゃ嘆いてます(笑)

中小企業の人事のおっちゃんたちのノリ

※企業のおっちゃん・おばちゃんたちの声を代弁して語ってくれました。

(就活生は)まじめすぎるっていうか、おとなしすぎる。失敗せんとこうと思って、みんな何もしゃべらへんし。うん、ちょっと、(企業にしたら)「もっとガンガン来て欲しいのになー、ほんまは」みたいなところがあるんですね。

「質問ある人」って言っても、質問しなあかんからするみたいな感じで、おとなしいなぁーって、おっちゃんたちには物足りない、みたいな(笑)。

(質問タイムにしても)大きい企業やったら、もしかしたら賢い質問を考えた方が得なのかもしれないですけど、私が担当してるのは、けっこう中小が多いんで、「元気やったらええんやー!」みたいなノリですけど(笑)。

Q: う~ん(笑)。なんか世代間ギャップみたいな?学生にしたら、すごい精一杯、頑張ってサービスしてるのに、ミスマッチがあるんやな。

そうなんですよ。私、(仕事で)企業にインタビューしないといけなくて、どういう判断基準、採用基準で、面接してらっしゃいますかって聞いたら、(おっちゃん調で)「フィーリングやフィーリング~」って言われて!

フィーリングで決められても学生困るよな~っ(笑)て思ったんですけど、けっこうそういうところは多いみたいです。

Q:うんうん(笑)。やっぱフィーリングやんな。でも、そのフィーリングって、どういう基準だと思う?

そうですね、積極性とか、あとコミュニケーション能力はやっぱりすごい言われるんですけど。面接で、何を話してるかより、どう話してるかを重視するというか。すごいもう「私は面接受ける側です」っていう態度で、聞かれたことだけ応えるみたいなんでは、ちょっとやっぱり。で、面接だけど、おっちゃんと会話してるみたいな感じで、「~ですかね」みたいな、そういうタイプの子っているじゃないですか。ほな、すごい評価される。

Q:なるほど。でも、そこで決めちゃうのがほんまに企業にとってベストなのかどうかもちょっと疑問じゃない?

そうです。その場はそう(おとなしく)ふるまってただけで、すごい積極的な子かもしれんし。すごいそれはあって、だから企業は、「もっと自分を出して欲しい」ってすごいよく言ってて。「あんまつくらんといてー!つくられたらわからへんやんかー」って。企業側も、優秀やと思っても自分の会社に合わへんと思ったら採らない。合うと思ったら採るっていう。でも、「つくらない」って、学生にしたらそれが難しいと思います(笑)、なかなかそんなんできへんわーと思いますけど。

Q:なんかつい面接になったら、あがっちゃうやんか。

絶対そうですよね。

Q:それに、つくらないと落ちるというか、だめとはいわれてへんけど印象が良くないんじゃないかとか。たとえばパンツスーツってあんま良くないとかさ、そういう、見られてるみたいなんってあるやん。

実際、かわいいかかわいくないかはとっても大切やと思います(笑)。見た目の印象もむっちゃ見てますから。

*試しに情報を総合すると、人事の人も人間ということで、外見の印象はできるだけ「常識」にのっとって好印象を与えるようにしつつも、しゃべりのうえでは、こっちから元気に会話してやろう、っていうような心構えが良いのかな?

ちょっと思ったのですが、これは、就活に限らず、日常で、世の中の年配の人や初対面の人と感じ良く接しようとするときに自然にしていることに近いのでは?もちろん面接は運命かかっているので、緊張するけども、緊張もご愛嬌ってことで、フレンドリーな態度を忘れないことが助けになるかもしれません。

面接という舞台で、明るく元気な自分の演出…そんな演出が表面的に思えて苦手な人ほど、頑張って、面接官に対して親しみのこもった元気さを出してみて欲しいです。そうじゃないと中身がもったいない。上記の話を聞いて、そんなふうに思いました。

就活する人へのメッセージ

毎度恒例ですが、就活をする人へのメッセージとして、就活の先輩として、また今の仕事をしていて言えることなどを聞きました。

~“合う・合わない”の問題であって、自分がダメなわけじゃない。たくさん受けていたら、自分に合う企業がわかる~

ありきたりですが、やっぱり“合う合わない”ってすごいあると思いますし、すごい優秀な人でも、行きたい企業落ちることもあって、それは別に自分がだめだとかじゃなくて、きっとこう、合わへんかったとか、そういうのがすごいあると思うんです。

なので、落ちたから落ち込むとか、そんなんせずに、いっぱいいっぱい、めげずに、いっぱいいろんな人に会ったりしていったら、「あ、合うな」って思う企業きっと見つかると思うんです。もし、合うなと思っても落ちてしまったりして、ほんまに自分が行きたいのに落ちてしまったりしたらー、そんときはもいっかい、自分の何がだめやったんやろうって、考えたらいいと思うんですけどー。あまりダメージを受けずに、進めて欲しいなと思ってて。

在日の子とかやったら、在日のことをすごい聞かれたり、ちょっとネガティブなこと言われると、落ち込んでしまうこともあると思うんですけどー、ほんとにいろんな人いますしー(笑)。社会に出てもいろんな人がいます。その人はその人の考え方やなと思って、面白い考え方の人に会いたいくらいの気分で、「どーん」と構えて、就活やってもらった方がいいかなーって、やっぱり思います。

就活はあんまり深く考えへんほうが(笑)、うまくいくかなーと思います。とりあえず動いてたらなんか見えてくる、みたいなところがあるから。

~人事の人は、良くも悪くもいろんな人がいる。面接といっても、人が人を判断してるということを忘れないで~

Q:私のまわりは、大学時代に在日のサークル活動とかやってる友達が多いんやけど、そのことを言うか言わへんかとか、でもそれ言わんかったら他に言うネタないやんか(笑)とか、どう言うのかとか、めっちゃ考えてしまうみたい

そうですね、ほんまにこの企業にいきたい!っていうところに、それをぶつけたらどういう反応が返ってくるんかってすごい考えますよね。別にどうでもいい企業やったら、言ってみてどうにかなるわ~で、就活できますけどー。

Q:今の仕事をしてて、就活のことってどう見える?

ほんまに、人事の人って別に、そんなすっごい人たちじゃないんで、ふつうに、私たちがあとたぶん五年・十年したらなるようなおっちゃんおばちゃんで。そんな普通の人が、人(学生)のことなんか見てわからへんって思うんですよ。だから、それでたとえば自分が落とされたからとかで、なんにも自分が否定されたことでもないですし、“合う合わない”っていうのが絶対にあるんで、あまり気負わずに、接してほしいなと思います。

相手が人間やっていうのをもっと、鉄仮面かぶった人じゃないっていうのを考え、感じて欲しいなとすごく思います。

Q:なるほど、仕事で人事の人とつきあってるからわかるんや。

そうなんです。ほんまにほんまに変な人多くてー(笑)!
えー!こんな人でもいいん??ってぐらいの人もいるんでー(笑)、しょせん人が人を判断してるんやっていうぐらいに感じて欲しいんですけどね。

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