就職活動の名前の悩み、これから就活する人へのメッセージ
就職活動の名前の悩み
親は完全に日本名で名前をつけているし、大学で留学同に出会うまではずっとふつうに通名を使っていた。民族名の読み方は一応聞いたことがあった。親がたぶん祖父母から聞いたものと思う。
親はずっと日本名しか使っていなくて、思えば朝鮮奨学会の口座のために父親が民族名の名義で口座を作ってくれたときも、日本語読みだった。上に兄がいて、理系就職で技術者として働いているけど、当然のように日本名で就職している。
大学で、留学同の活動の中で民族名を使い始めた。そこからバイトやゼミでは民族名でいくようになっていた。姓も下の名前も朝鮮語発音の民族名。でも就職活動となるとやっぱり相当迷った。考えて、就活した名前は、折衷案的で、民族名の日本語読み。
家族の中では民族名は(日本語読みでも)、「何を考えてんねん、受かるわけない!」っていう感覚。だから心配させないように、民族名で就職活動していることは親には伏せていた。
親からは、通名で行けって言われてたんですけど。そんなんあたりまえやろって。民族名でいって受かるわけないやろって。…でも、あの、留学同やってたりしたから、それはちょっとあれやなーって思ったんですよね。ここで完全にまた逆戻りしてもいいのかなって。
相当迷ってました。だってもう、あもうしょうがないかなーと思って、学部の窓口行って、名前を変える書類、本名に変えたときに出したやつをまた通名に戻して、また持ってったんですよね。
で、そうすると、その学部の窓口の人に、「ちょっと、そんなころころ変えられては困る」みたいなこと言われたんですよ。「これで最後ですか?」って言われたんですよね。 こんなきつい言い方じゃないですけど、「そんな頻繁に名前変えられてはこっちもあれなんで、これで本当に最後ですか」って言われて、でそこで、「いやちょっと待ってください!ちょっと相談しますっ」みたいな。そこでゼミの先生に相談しにいったんですよ。
ゼミの先生は韓国人(ニューカマー)で、日韓関係の政治学のゼミ。ただし、このとき先生に話したのは、悩みの本当の内容ではなくて、帰化についての先生の考えを尋ねた。帰化しないと就職に不利になるらしい、自分は全然わからないが親が不利だと言ってるのだが、という形で相談。
そこで言われたのが、今まで考えてきたことを全部なくしちゃうのはもったいないから、自分が本当に幸せになれるような生き方をしなさいというようなこと。
で、民族名でいったら、たぶん僕は受からないだろうと思ったんですよ。完全に民族名では。だから中間とって、日本読みでなんとか行こかなと思ったんですよ。
日本読みで行ったら、おっちゃん(花王で働いている親戚のおじさん)のケースがあるから、これはけっこう大丈夫かもしれないって。前例があったんで。
でもその、ふつうの民族名でいって、「チョン」でいってて、同じところに入ってる先輩もいるんですよ。だから今からいえば、もっと正々堂々と、男らしく、いくべきやったなと思います。
うん、やっぱりその自分たちの生きてきた時代っていうのもあったし、でまわりの話もいろいろ聞いてたんじゃないかなと思いますね。僕は何も知らないからそれを否定できないし。社会っていうものを知らなかったから。
やっぱり親がそこまで信念もって差別があるっていうなら、本当にそうなんかなってちょっと揺れるじゃないですか。そこで不安になる在日の人はすごい多いと思います。
親は喜んでましたね。でもただ、不安がってましたね。「お前、日本社会の中では、名前が呼びにくいやろ、みたいな」。そんな問題じゃないでしょって思うんですけど(笑)。
名前のことは、採用内定後にも続きがある。就活のときは、折衷案として民族名の日本語読みで就活したけど、就活を終えてから、韓国に初めて行ったことなどもあって、自分のなかで、大学時代に名乗り始めたもともとの民族名(朝鮮語読み)に変えたい思いが膨らむ。そこへ、内定式の前に名前の訂正・変更を受け付けたいという電話がかかってきたので、そこで名前を朝鮮語読みに変えた。
運悪くというのだろうか、実際にあたった上司が右翼的な人で、その名前の変更のことも全く歓迎されなかったし、そもそも外国人への偏見や韓国への蔑視をふつうに口に出すような人なので、自分の思いとしては今働いていて、けっこうきつい。
就活で特に苦しんだこと
就職差別はあるし、実際・・・、あると思いますよ。後輩もそれで(※外国籍はだめと言われて)落ちてるんで。ただ昔よりは、・・・ましにはなってるのも事実だと思います。親の世代よりは確実に良くはなってると思います。
ただ、でも、今の現状、在日が就職しやすい状況にあるかっていったら絶対そうは思わないし。その後受かってからも大変やと、民族名でいくのは・・・。だから難しいですよね、それどうしようかなーって考えてるんですけど。
それなりに実力があって、俺はもうこの道でいくんだ、たとえばコンピュータやったら、コンピュータのエンジニアとしていくんだってなったら、もう在日とかいっさい関係なく、実力の世界になると思うんですけど、そうじゃなくて、ただ普通に働くっていう面でいうと、なかなか厳しいところもあるんかな。人より秀でたところがないと。まあそれは当然、そうなんですけどね。
けっこうでかいです。
理想としては、やっぱり自分の自信のあるところで勝負したら、もう、在日とかそんなん関係ないからいけると思うし。逆にあとは、なんですかね、難しいですけど、気にしない人間になる!・・・っていうのが、僕はちょっとそれができないんですけど(笑)。
あー、やっぱり名前。どういえばいいのか、就職活動って、・・・やらなきゃいけないじゃないですか、当然メシもくわなきゃいけないし。でも、在日として生きていくっていう生き方とはまた違うじゃないですか、現実的な生き方になるし、それでやっぱ一番苦しんだ。不安だし、やっぱり。みんな、日本人以上に不安やと思いますよ。
難しいですね。ただ、企業の面接がどういうものなのかっていうのはわかって。どういうことを期待してんのか、あ、企業ってこういうこと興味あるのかって。いや、ぼくはそこで企業の力量が別れると思うんですけど。企業の個性がでると思うんですけど。どういう人を採りたいかっていうので。僕が受けた会社のなかでは、なんだろな、どんだけこいつは言うこと聞くかとか(笑)。冗談ですけど。まあ実際入ってみてわかることの方が多かったりすると思うんですよけどね。
最後にこれから就活する後輩へのメッセージを
あのー、在日だから不利は不利じゃないですか、当然。だから自分の本当に自信のもてる分野でやるのがいいと思います。在日だからっていう不幸?不幸じゃないですけど。不利を、なんていうんですか、ハンデを、ひっくり返すだけの何かがあればいいなと。韓国に留学して韓国語を覚えて帰ってくるとか、いや、アドバイスこんなんでいいんかな(笑)。
(まじめに言い直す感じで)自分の強みをいかして就活ができるように準備しておくこと、それが一番みんなに言えますかね。で、一時のものだけをみないで、もうちょっと長いスパンで見たらいいかなと思います。働いてからのこととか。・・・まあ難しいかもしれないけど、会社ってどういうもんかもわからないと思うし。
名前で迷ってたらもうとりあえず、相談、ですね。誰かにもう相談しまくると。そっから見えてくるものがあると思う。
僕はやっぱり、その人が持ってる信念かなと思います。ほんとは僕の願いとしては民族名でいって欲しいんですけど。
そう・・・、まあ働く業界にもよるかもしれないけど、あと自分自身の心の持ち様っていうのもあるかもしれないですけど。迷ってるーっていう段階では、なかなか・・・。
ちょっと・・・そうですね。言えないですね。僕夢がないですね(笑)。行ってほしい、ですけどね。で、実際応援してくれる人もいます!いないってことは間違いなくないんで。それは自分で決めることかなと。
知ってるんですねー、たぶん。よく聞くと、友達に在日がいたりするんですよね。